仏教心理学会 運営委員・副会長
千石 真理 

 この度、リレーエッセイ執筆にて仏教心理との出会いを振り返らせて頂くことになりました。2008年11月30日、武蔵野大学にて日本仏教心理学会が設立された日のことを感慨深く思い出します。改めて省みますと、仏教心理は私の人生と深い関わりがあることに気づかされました。 
 
 浄土真宗本願寺派の寺族として誕生しましたので、仏教儀礼、教えは幼い頃より身近なものでしたが、心理学との出会いは、人生の紆余曲折を経験してからとなります。
 
 20代半ば、婚約者が脳腫瘍で亡くなるという出来事がありました。心身ともに疲弊し、三年間、抑うつ、パニック障害で苦しみましたが、当時は一般的に精神障害に対する理解や知識が乏しく、精神科や心療内科を受診するというのは考えらないことでした。内科で処方された薬で、通常の生活が維持できるほど体が楽になったのを思い出します。回復した頃、思い切って本願寺ハワイ開教区開教使に志願し、本願寺日本人女性初の開教使としてアメリカ人に浄土真宗の教えを伝える任務を頂きました。アメリカでは神父、牧師が信者の悩み相談をするために心理学、カウンセリングの修士号程度は取得し、僧侶にもその役割を求められていることに驚きました。また、病院チャプレンとしてグリーフケアをさせて頂き、欧米では聖職者が医療チームの一員として大切な役割を担っていることに感銘を受けました。自分自身の愛別離苦の経験とも重なり、日本でも是非、仏教が心のケアに生かされるようになれば、と考えるようになりました。その後、ハワイの仏教徒のニーズに応えられるものをと模索し、仏教修行の要素とカウンセリングの両面を兼ね備えた内観療法を一時帰国して研修。以来、そのエッセンスを現代人に受容され易いようにと心身一如のコンセプトでヨガ、気功、瞑想法を導入し、日米で実践しています。
 
 仏教は時代背景、文化がどんなに変わっても変わることのない人間の本質を喝破し、解脱への道を教えてくれます。心理学は、科学的な分析を用い、各精神症状や、その時代を生きる人に有効なエビデンスを提供してくれます。仏教の智慧を現代人の救いに生かす仏教心理学会をケネス田中先生、岡野守也先生、井上ウィマラ先生が発起人となって設立して下さり、以来、現在まで運営委員として務めさせて頂くご縁に深く感謝しています。会長を務めて下さり、道標となって下さった恩田彰先生、大須賀発蔵先生を懐かしく思い出します。また、学会を支えて下さっている運営委員、評議員の先生方、会員の皆様とは、よほどのご縁で結ばれていると感じています。
 
 釈尊は、「人生は苦なり」と説かれましたが、自己の四苦八苦に向き合う時、苦しみや悲しみだけを味わい、虚しく人生を終えるのは寂しすぎます。悲しみを通して喜びに出会う、迷いを転じて悟りとする、転迷開悟の仏教の教えを、心理学と協働して現代人に分かりやすく伝えていく。仏教心理学会は、その役割を今後ますます、担っていけるのではないでしょうか。
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